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綾城初穂先生の
学校の対立問題へのナラティヴアプローチ


学校現場では、いじめや暴力は避けて通れません。こうした対立問題の対応として最初に浮かぶのは、問題を起こした児童生徒に謝罪の指導や罰則(時にカウンセリング)を行うことではないかと思います。ここには、その前提として「児童生徒の心の中に問題があって、それを変えれば解決する」という本質主義的な考え方があると言えます。しかし、本質主義的な対応は効果がない場合も少なくありません。問題とされた児童生徒は心を改めるのではなく逆に怒りを増し、場合によっては被害生徒に報復する可能性もあります。また、被害生徒には何も提供されません。さらに「対立はより強い者(この場合は教員)が解決する」「対立は問題のある個人を排除することで解決する」という、実質的にはいじめや暴力と同じメッセージを児童生徒に学習させることにもつながりかねません。

この点で、ナラティヴセラピストのジョン・ウィンズレイドとマイケル・ウィリアムズによって提案された対立問題へのナラティヴ・アプローチは、非常に大きな可能性を持っていると私は考えています。本アプローチは本質主義的な仮定を取りません。そして、加害生徒を含めた児童生徒が主体的・協働的かつインクルーシブな形で(例えば、加害生徒・被害生徒・傍観していた生徒を同時に対象とするといった形で)自ら問題解決を図ることができるよう、支援をデザインしています。そのため、本アプローチを使えば、学校の対立問題自体を子どもたちにとって問題解決学習の機会へと変えられる可能性もあります。

本研究会では、このアプローチの理論的背景を説明したうえで、いくつかの実践方法について、日本で行われた具体的な事例に基づいて紹介します。また、実際に実践方法の一部を体験する機会も設けるつもりです。ご関心がある方々の参加をお待ち申し上げております。


参加お申し込みはこちら
日  時 2019年6月16日( 10時15分~17時00分  
  内  容   1.学校の対立問題の課題
2.ナラティヴ・アプローチの基本的考え方(簡単なワークも行います)
3.事例の紹介:メディエーション(対立相手同士の仲裁)
4.ワーク:修復的実践(対立相手との関係修復を目指す実践)
5.事例の紹介:秘密いじめ対策隊(学級内でチームを結成、秘密裏にいじめ対策)
 
講  師 綾城初穂先生
駒沢女子大学心理学類/同大学院臨床心理学専攻専任講師。カリフォルニア州立大学客員研究員、福井大学教職大学院講師を経て現職。臨床心理士。公認心理師。専門は教育相談、質的研究(ディスコース分析)、ポジショニング理論。教育・研究とともに児童生徒とその保護者への心理支援や教員へのコンサルテーションを行っている。
<主な著書・訳書>
いじめ・暴力に向き合う学校づくり/新曜社
ポジショニング理論によるクライアントの語りの理解/ミネルヴァ書房
ディスコースの視点から見た親面接の理解と意義/心理臨床学研究
What does a diagnosis of Asperger’s syndrome mean to a school-aged Japanese client? A case study illustrating the use of positioning theory.
Deconstructing dominant discourse using self-deprecating humor: A discourse analysis of a consulting with Japanese female about hikikomori and NEET.
会  場 月島区民館 5号室 (東京都中央区月島2-8-11) 地図はこちら
定  員 60名程度(お申込み順)
参 加 費 4000円
主  催 NPO法人 日本ソリューショントーク協会
ブリーフセラピー研究会
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